人を「機能させる」のに必要な第2のフェーズ

人を動かす仕事、人に指示を出す仕事

いわゆるリーダーシップを積極的に執れる人は常にこういった仕事に携わるだろう。

そんな人たちに大事にしてほしいことがある。

 

"How"だけの伝達ではいつか組織が疲弊する

普通、組織というのは数人の同じ意志を持つものによって作られる。

大抵、はじめは人も時間も物も足りないが、小数の場合はそれでも組織の維持が可能で、意外とある程度は成長してしまうものでもある。

 

一方で、組織が大きくなればなるほどに成長は鈍化し、ある一定の基準を満たした途端に成長が止まり、その体裁を保っていられなくなる組織が存在する。

 

-なぜだろうか?

それは成長に従って、互いの意思伝達が不十分になるからだ。

例えば、ある組織内にAさんとBさんがいたとしよう。

Aさんは主にBさんに仕事を頼む立場であり、またAさんは組織の中核の人間でもあるため、組織での意思決定とそれに伴う行動指針は直接Bさんに伝えることができていた。

ところがある時、組織の成長に伴いBさんには部下ができた(Cさんとしよう)。

 

この結果、Bさんがやっていた仕事の大半はCさんが引き継ぐ形となり、Bさんは他の部署も兼任する管理職の立場となった。

 

すると、今までBさんができていたことが、Cさんに変わった途端にできなくなる事態が発生し、組織におけるその部署の生産性は著しく低下した。

 

そう...

組織の成長とは、言い換えればすなわち組織の中心と末端の距離が離れていくことに他ならない。距離が離れると何が起こるだろうか。容易に想像ができると思うが、中心部から生まれた意思決定や新たな行動指針は末端の人間にとって非常に不透明かつ何らかの大事な情報が欠落したものになる。

 

たとえば

Aさんが

「〇〇(意思決定)のために△△(行動指針)をしてほしい」

とBさんに伝えたとしよう。

 

そしてその指示をBさんが

△△(行動指針)をしてほしい

とだけCさんに伝える。

 

この場合、Aさんの出した意思決定と行動指針の指示の2つのうち、意思決定の意図がスクリーニングされて、行動指針のみがBさんからCさんに伝達されている。Cさんには行動指針のバックグラウンドは伝わっていない。つまり"How"の指示は伝わっているが、なぜその行動指針に従うのかという"Why"の部分は伝わっていない。

 

組織の成長を促進するか、鈍化させるか。

そのネックとなる部分はまさにこの点である。

 

"Why"を伝達されず、"How"だけを伝達される身となって初めて実感するのは、「果たして自分のやっていることが最適なアプローチなのか判断することすらできない」ということだ。考えてみれば当然だ。「これをすればいい」だけを知っている人間では、もし仮にちがうケースでの仕事を求められた時、自分のアプローチの仕方は1つしか持ち合わせていないので、対応できなくなる。

 

逆に自分の与えられた仕事や作業にどんな意味があるのか、その背景や事情をきちんと理解しておくことさえできれば、他のことへの応用や転換もできる。

 

人を動かすことは比較的簡単である

的確な行動指示を出せば、少なくとも自分がそのポジションにいる間は仕事が回る。

 

しかし、自分がそこから離れたときはどうだろう。

おそらく、自分がいた時に比べて機能性は著しく劣るだろう。

 

リーダーシップをとる立場として真に求められる能力は的確な指示だけではない。

指示能力はあくまで第1フェーズ。

 

誰かを管理・統括する身として、スクリーニングで排除してはいけない最も大切な組織の中核の意思決定を、適切なKPIや目標設定と共に組織の末端にまで拡充させることが必要だ。

 

すなわち、これが第2フェーズ

人を自律させ機能させるのに必要な、「意思伝達」の正しい拡充である。

 

Howの基盤に存在するWhyの部分。

そこを大切にできなければ、人の成長と自律は促せない。